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ぼけますから、よろしくお願いします。

11月に観た映画のメモです。最近は映画を観る欲求すら薄れつつありますが気になっていたので突撃しました。ごく簡単に内容をおさらいすると、元々は2016年のフジテレビ番組Mr.サンデーで流れたものを再編集した老々介護を扱うドキュメンタリー映画です。

映画「ぼけますから、よろしくお願いします」公式サイト

 

映画館がデイサービス状態でした

どちらかというとミニシアター系の上映ですがテレビでの前評判が高いこともあってか連日満席が続いているようです。私が行った日も大入満員。観ることができなかったので日を改めて突撃したのですが老人の多いこと!映画が始まって10分ぐらいすると前後左右からサラウンドでイビキが聞こえ始めました。この映画でイビキはご愛嬌。いやはや、老人大国ニッポンの真実ですね。

舞台は広島県呉市。最近の映画では「この世界の片隅に」の舞台です。随所に泣き笑いが盛り込まれておりますが備前・備中・備後圏の方であれば方言だけで「あぁ、懐かしい」と言わしめる超ローカルな内容です。これを撮られた信友直子さんもチラチラ登場されていますが東京で活躍されている割に広島弁が板についている印象です。映画では距離がある設定ですが、実際は実家へ頻繁に顔を出しご両親をサポートされていると思います。

この世界の片隅に - en1

 

三者三様のキャラ

良則お父さんのキャラは大正オヤジでは典型的。映画の中でも「男の美学」とか「定め」というキーワードと共に娘に対して「わしが元気なうちは自分の道を歩め」という...まぁこの辺りの世代特有のオーラを放つ方です。ご夫婦の若かりし頃の写真を拝見しながら「自分が20代でこの親父さんに睨まれたらちょっとビビるかもなぁ」とか「でも瞳の奥は優しそうだなぁ」とか...他人の親父さんの性格を妄想しておりました。

文子お母さんのキャラは...この映画の中ではアルツハイマー型認知症で苦しまれる様子が写っておりますが、これまたどこにでも居そうな昭和の母です。ピシャっと蜂の一刺しみたいなトークをされることもあるのですが普段は前に出ることなく、趣味というには凄すぎる書の達人になるまで努力されたお方。映画の中で認知症を発症後(だったと思いますが)娘の帰京をバス停へ見送る姿が印象的でした。誰でもこういう経験があると思います。子供が還暦の歳になっても(特に母)親にとっては大切な子どもなんですね。

平成が終わる時代に戦争を知る夫婦のお話しです。

夫婦とはかくも素晴らしきかな

娘・直子さんのキャラは...舞台挨拶の日も映画館に足を運んだのですが満席でしたのでリアルキャラを存じませんが...まぁ優しい方ですね。映画では乳がん治療で脱毛シーンがありますが極めてごく普通の女性に感じます。この映画(というか、元々はテレビ番組)に対しては賛否あり、親が老いゆく姿を映像で晒すことに対する違和感が受け止められな方もいらっしゃるようですが、これも時代であり表現者としての性でしょうね。

 

映画全体の印象

老々介護や認々介護のリアルが垣間見れます。記憶が曖昧ですが...山積みの洗濯物を前にして広島弁で「たいぎー(だるい・めんどう)」と言いながら倒れこむシーンなんて秀逸。高齢者の真の姿ですね。

終盤には文子お母さんの認知障害によるイライラが爆発し「死にたい」と言い出し、良則お父さんが売り言葉に買い言葉で「死ねーや」と言い放つシーンが印象に残った人も多いと思います。お父さんも本心じゃないのについ口に出ちゃうんですね。それが認知症介護の難しいところです。なにせ80歳を越す者同士。一方は耳が遠く、他方は脳に障害がある者の会話ですから修羅場です。それをありのまま撮り続けた娘はよくやったと思います。

ファインダー越しというだけで他人事のようにカメラを回せる妙

普通は娘として何か声を掛けますよ。ついつい口に出ちゃうはずです。例えば「死ぬとか死ねなんてゆーちゃーいけんよ」と。それを飲み込んでカメラを回し続けたせいで映画になっちゃいます。あそこで声が入ると単なる家族ビデオ臭が強くなっちゃいます。あのシーンは直子さん...完全に職業病だし...と思いながら見つつ「このシーンの後カメラを止めて互いを労う声をかけたんじゃないかなぁ」なんて思いました。日本人の殆どは「ガン、心臓病、脳卒中」で逝くわけですが、仮に健康でも65歳を過ぎたあたりから認知症はやってきます。映画では文子お母さんが少しずつ認知で壊れゆく姿が収められていますが、明日は我が身です。

実は私の身内も似たような境遇が起こり始めており、このディレクターと似たようなことを残しはじめております。世間様に公表する気は無いのですが、自分が生きている間は自分自身の業としても残しておきたいと思いました。

ごく最近の動画状況を知りませんが昨今のネット動画はマネタイズありきで物事が進むので真実や事実は後回しで「他人のフンドシ&ゴシップネタを小綺麗に編集して小銭チャリン」が当たり前すぎて深さゼロの動画ばかりの中で、この映画のように生死の様を包み隠さず見せられるとズシッと重たさを感じます。

 

文子お母さんの言葉に胸を打たれる

先に触れた「死にたい&死ね」シーンも刺激的ですが...。

心に残るシーンは幾つかありました。親子は他人でもあります。故に終末期に向けた会話はオブラートに包んだトークの連続になりがちですが90歳を越す高齢者や認知症となれば話しは別。

例えば...うる覚えですが「お父さんはお風呂を水で流すけど洗ってない」「介護保険を払ってきたんだから利用させてもらえばよい」「ヘルパーさんがおるときに言わんとだめよ」みたいなシーンがあったと思います。直子さんの娘としてのなにげない会話なんですがこんな些細な会話にも親子の目に見えないハードルがあったりします。それが直子さんの手探りの対応であったとしても「現実的なことをはっきり伝えることも大事」なんて思いながら見た介護者も多いと思います。

この映画最大の見所は認知症を発症したであろうタイミングでカメラを回していたことにあると思います。文子お母さんが「バカになってしもーとる。どしてかね。どしてわからんよーになるんかね。おかしいね。」という発言。病院で検査を受け脳の萎縮からアルツハイマーと診断され、その情報を父親と共有し、生活が徐々に老々介護へ向かう流れ。今も昔もどこにでもある光景です。

娘として母親の認知を察知したことで訪問介護やヘルパーさんとのやりとりが映像に残ることになります。それだけ親子関係が仲睦まじかった表れだと思います。肝となる変化に気づいたことが凄いですね。時間の経過と共に把握できることは当たり前ですが発症タイミングで察することが出来、そのシーンを映像で見せることで「認知症のサインを見落とさないでくださいね」という注意喚起の映画になるわけです。そして究極のひとこと「ぼけますから、よろしくお願いします。」という言葉が生まれます。目には見えない台本に乗った瞬間だと思います。

それと同時に味わい深いのが良則お父さん。もはや他人とは思えない...。

わかりますよ。その辛さ。腰の痛み。ご苦労様です。

購入したパンフレットにも載っておりました。このお姿。印象的です。

なんで腰が曲がっちゃうんでしょーね。重い荷物を気合いで運ぶ姿は私の父親にもそっくりです。全く同じ状況です。でもこのシーンも笑えません。これから日本全国で長きにわたりこれが繰り広げられます。このシーンを見たとき「買い物に歩いていける場所に居を構えるというのはイロハのイだな」とか思ったのでした。

映画館に入ってパンフレット買い、席についてパンフレットを眺めていると映画が始まったわけですが、その時見ていたのが6ページ目の(たぶん)錦帯橋を背にした写真です。ご夫婦共に60代になり第二の人生スタートといったところでしょうか。良則お父さんはジーンズにポロシャツとおぼしきお姿。文子お母さんもスカートにポロシャツ。お若い!それがね、70代も中盤を過ぎると着るものすら執着しなくなります。そういう感覚は高齢者に寄り添うようになって分かることですがパンフレットを見ても一目瞭然。日本全国がそういう社会に向かっております。

人口の半分が高齢者になると世の空気は激変しますよ。

 

夫婦同時に死ねないからこそ「互いに思い合っている」

文子お母さんは2018年9月30日に脳梗塞で倒れたそうですが一命を取り留め、目下リハビリの最中で...おそらく娘さんも老健や特養といったキーワードと格闘されていることと思います。良則お父さんも居眠りが増えていると。子どもの立場での大立ち回りが求められるタイミングですよね。

本当の介護の難しさはここからですよね。

とにかく親は子どもに迷惑をかけたくないと思って奮起するも、誰だって最後は動けず、食べれず、ボケて逝くわけです。私の両親も最近よく聞くキーワードは「ボケてしもーて情けない。正直泣きとうなるよ」と申しており、認知症が始まりつつあるようです。

でもね、我が両親の会話も仲睦まじいですよ。直子さんが書かれている文字そのものです。「カメラを向けて初めて気づいた。両親が互いに思い合っているということ。」。...偶然にも似た境遇になりつつある自分のことを重ね合わせながら「夫婦の最期はどの家でもこうやって家族の歴史を閉じてきたんだろぅなぁ。」とか思っています。

死が縁遠い人生を送っている人にとっては息苦しい内容だと思いますが最後は誰だって通る道です。見て損のない、感動するための映画ではなく、備えのススメとしておすすめの映画です。まだまだ観客動員数を伸ばすと思います。

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