本日のメモはズバリ「移民」というタイトルの本。
移民の本は何冊読んでも飽きない。
この本は1992年(平成4年)に「中国新聞創刊100周年記念企画」で刊行されたらしく、まもなく130周年ということになりますが、なんで中国新聞がこんな本を出したかというと、広島県と山口県が日本屈指のアウトバウンド移民県だからですが、本当に広島県というのは…ちょっと他の県とは毛色が異なる印象です。
別に世間で話題?のひろゆき氏なるお方が説く県民性とは意味が違い、やはり「群れない、媚びない、靡かない気質」というのが近いかと思います。
まぁ言葉は表裏一体ですから真逆にも通じますが、本当に先の三拍子を備えているとなると、その耐性により移民が成立したともいえます。手段は「当たって砕けろ」、結果は成功すれば「イノベーター」。
私も子供時代を過ごしましたから移民最多排出県ということはガキの時分から知っており、実家がある場所(当然大昔は村)からも移民第1号を輩出していたことを知って「この場所も貧乏な地域だったんだなー」なんと思っておりました。移民、棄民、貧乏人を同一に語れませんが、貧しかったことも事実です。
何が凄いってね、かつて大学受験で「石を投げたら10人に1人は…」みたいな例えがありましたが、「海外で日系移民に石を投げたら…」ぐらい凄まじい排出人数でございます。
しかも全方位を網羅。「ハワイ、アメリカ、カナダ、ブラジル、ペルー、パラグアイ、アルゼンチン、ドミニカ、メキシコ、旧満州、フィリピン、オーストラリア、ニューカレドニア」の13ヶ国に渡った広島県民が実名で登場します。
それらのどれよりも気になったのが「第五章 ニッポン編」です。
第五章はインバウンド移民県の視点で書かれていますが、なかでも気になったのが「斡旋会社」について。斡旋会社というよりは、結果人身売買の延長ですよね。人を斡旋しても借金漬けでピンハネしてるわけですから。その窓口が送り出し国と日本の2ヶ所。
小見出しがいちいち切ない。
「望郷」「手を携える3兄弟」「働くなら亡父の故郷」「自炊生活」「戒律に従い一カ月断食」「帰国?定住?」「労災事故」「僕らゴミ?」「砕かれた夢」「健保加入渋る企業」「たらい回し」「冷たい学校」「旅券は会社保管」…etc
同じことを日系移民も味わったから、日系出稼ぎのあんたらも辛抱しろというのは時代錯誤以前の話ですし、知らぬ存ぜぬで済まないと思いますが、ちょっと面白い行がありました。
県議が南米や東南アジアを最もらしいお題目を掲げて放浪してたら要注意ですな。私の思考に移民のコネを探りに徘徊という視点は全くありませんでした。表向きは経済がどーたら、友好がどーたらですが、裏ではこんなことをしてたんですな。斡旋会社、政治家、(京濱)銀行が結託した悪行というのは昔話ではなく、今の時代もほじくり返せば出てきそうです。
最近はベトナム人の労働問題をよく耳にするので、手垢のついてない国を順番に100年前と同じ手法で続けてるんでしょうかね。
資本主義に麻痺すると「国家戦略特別区域」と銘打って日本人より安い労働力を為替差益だけで釣り上げては3年程度働いてもらってバイバイというパターン。しかも来日労働者は人生で最も大事な20代に集中させてますが、いつまで続ける気ですかね。
日本政府は「急激な人口減少」に対し「少子化対策と書いて外国人技能実習制度による員数合わせと読む作戦」を実行中のようで、もはやお家芸レベル。日系移民2世が文字通り命がけで人権を得た歴史から、未来の日本でも同じことが起こりうることを知ってか知らずか緩い政治が続いておりますが…。
この本は今から約30年前の本ですからギリギリ1世移民のインタビューが間に合った部分も多分にあります。それがこの本に重みを与えてるように感じます。ハワイ、アメリカ、カナダに関することは自分が若い時に旅先でお世話になり、それなりの情報を持っていたつもりでしたが、こういう本を読むと改めて知識を得たい衝動にかられました。
おすすめの一冊です。
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