明治生まれの助兵衛オヤジ(永井荷風)日記 : 「断腸亭日乗」

ありがたい一冊
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とにかく私が記憶する永井荷風は浅草ロック座で遊びまくった学のあるスケベおじさんです。そんな人なので学校の教科書で見かけないのかもしれませんが、実は慶應大教授という肩書を持っていた時代もあり、変わり者です。

日記魔、永井荷風

5-6年前に古川ロッパの昭和日記を読んだことがあるのですが、それとは違って自由で生々しい文体の永井さん。基本的に金持ちのボンボンで育ち、教養を持ち合わせていた人ですが、それは今も昔も一緒の「親の目が黒いうちはいい子でいたい」演技で生きていただけです。父親が死んでからは待っていたかのように速攻で離婚して自由人を画に描いたような生き様。そこから始まる女遊びが凄まじい。日記にはその人生で梅毒を楽しまれたことも書かれています。真の遊び人。

カフェー(今で言うところの風俗店)に通う文は時代を超えた風俗感が伝わってくる生々しさ。先に触れた古川ロッパは仕事自体が喜劇人ですが、永井荷風は仕事は真面目でも本性は喜劇人を越えた変人で歯に衣着せぬ文体が爽快です。中でも戦争絡みの批判文は秀逸。

昭和16年12月 日米開戦

ざっくり言えば永井さんは戦争反対ですが、当時はガチガチの軍国主義ムードですから非国民如き文章がわんさか登場します。戦争に限らず大勢の人が常識と捉えることを「非常識」と切って捨てるには勇気がいりますが永井さんにかかると全てバッサリと斬り捨て御免。そこがこの本の醍醐味だと思います。文豪であれば全体の脈略を想定して書きそうなものですが、本当に日常(日乗)として記した行間の皮肉が最高です。もちろん当時この日記が特高に吊し上げられていたら小林多喜二みたいなことになっていたかもしれません。まぁ家が火事になって燃えていても、逃げる際に財産と日記を忘れなかったというぐらいですし用心していたことでしょう。

ビートたけしに文才があったら緑波と荷風をミックスした日記が残ったかもしれません。実はこっそり書いてたりして。

意外にもスケッチが上手い

そして別の楽しみは都内の食べ歩き情報。

古川ロッパの日記同様にこの本にもグルメ情報が満載。震災という(食)文化の強制リセットにより復興と共に飲食文化も激変したようですが、「歩くの大好き」な永井さんはとにかく都内をウロウロしては昼となく夜となく外食の日々。

永井さんは腸が弱く、すぐ下痢になる持病からタイトル「断腸亭」は来ていますが、それでも当時の銀座や浅草の足取りが気になります。特にメニューの中身。たぶん永井さんはグルメではなくルーチン生活しかできないダメ人間で、それを外すと壊れるタイプの人間に見えるのは私だけか...。そういう人、周りにいません?毎回同じ答えを返す人。「今日昼飯どーする?」と尋ねても「なんでもいいよ。昨日の蕎麦屋でもいいよ」みたいな人。同性だとつまらないタイプに感じたりもします。

グルメに関しては別の地図本を眺めながらの読書。

銀座と浅草は以下の本で足取りを楽しみました。私は東京生活が疎遠な人生なのであまりピンときませんが、それでも「銀座 歴史散策地図」は極めて詳細な地図を眺めているだけでハマります。

文豪に愛されたお店の数々を網羅

なんで地図って眺めちゃうんですかね。タモリ倶楽部のノリになっちゃいます。

1世紀前の世界へタイムスリップ

それにしても、こんな面ジジイが20人近い女性と遊べたのは...。

人は見た目が9割みたいなタイトルだけで本が売れてる昨今「やっぱ世の中最後はお金か」と思いたくなるほどイカさない飄々とした風貌ですがユーチューブに肉声がアップされておりまして、それを聞いた感じですとトークの切れ味はマイルドに鋭く、内容は実体験していないと繰り出せない引き出しの多さに「あぁ、当時であれば惹かれるかもなぁ」と妄想。

ちなみに「摘録 断腸亭日乗」は日記の一部を飛び飛びで綴ってあるので全て読みたい人は元祖7巻を買って読まれることをお勧めします。

 

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