先回に続き下巻レビューです。こちらは2番組を1冊にまとめた内容です。上下巻セットでヨーロッパ三部作が一気に楽しめるガイドブックとしては秀逸ですよね。とくに「ヨーロッパ20カ国完全制覇」の動画はネットでも当時の録画データが綺麗な画質で転がっていることは少なくDVD発売を待ちわびていた方が多いと思います。少なくとも私はその一人でした。全員が「みっちゃんのエッチデーデー」と「小林製薬の糸ようじ」見たさに買ってるであろうDVDだと思います。
なによりこの表紙。上巻の表紙選択も感心しましたが下巻はこれしかないでしょうね。大泉さんの顔にアイコラしたいぐらいです。「ここをキャンプ地とする」という名言から翌朝に至るシーンも秀逸です。よくテレビでは「笑いの神様が降りてきた」なんて言い方をされますが、大泉さんは持ってますよね。そういう大事なシーンを自分で天然構成しちゃう天才です。
「ヨーロッパ・リベンジ」と「ヨーロッパ20カ国完全制覇」
私が書くまでもないことですがリベンジは1999年9月ロケの退屈な北欧巡り、20カ国完全制覇は2006年8月ロケ。改めて見るとヨーロッパ・リベンジがジワジワ効いてますね。企画として北欧を無視するか制覇するかで番組全体の充実度は大きく異なります。
退屈続きなネタでも無理やり捩込むあたり、藤村Dの辣腕ぶりが伺えますよね。
(まぁ多額の制作費をかけてますからボツには出来ませんが)
ヨーロッパ・リベンジの「ここをキャンプ地とする」というコピーは私も大好きで、かつてPCの壁紙に設定していたほど気に入っておりました。助手席の窓ガラスの隙間が空いていることに気づいた上でカメラを回している辺り、嬉野カメラマンの腕が冴えるポイントだったりします。
ただヨーロッパ20カ国完全制覇については名言が思いつきませんでした。大泉さんのモノマネばかりが印象的ですが…やはり「小林製薬の糸ようじ」…ですかね。
糸ようじ・糸ようじ・糸ようじ!!
まぁ…雰囲気に飲まれますよね。実際こんなCMは無いそうですが、さも有りそうに思えちゃうから不思議です。「これはウケてる?なっ!」と察知すると連呼する辺りが大泉さんの天才ぶり発揮のポイントであることは有名ですが何度見てもクスっと笑っちゃいます。ついついクスっとね。
小林製薬さんがcm採用したら大泉エフェクトで売上爆増すると思いますが…。
小林製薬の
糸ようじ
/
ここでも昭文社のガイドブックが活躍
コアなファンなら古本でも綺麗な1冊をコレクションとして手元に置いておきたいんじゃないかと思うぐらい堂々と登場します。この編集に慣れると特別な驚きは無いですが、この番組はとにかく裏側も見せちゃいます。普通の旅番組だと「知っているフリor知らないフリ」で展開しますが、この番組は素人丸出し。誰だって海外旅行を自由に楽しめることを教えてくれます。
最近テレビを見てないので分かりませんが今でもそういうわざとらしい仕込み系旅番組をやってるのかな?
今ではネット情報が多いのでそういう番組を見てもワクワク感が小さいと思います。もはや裏側を見せないと番組が成立しないぐらい誰でも最新情報を探せます。そういう意味で水曜どうでしょうは最初からコレをやっているのでコンテンツとして廃れない強さがあるんだと思います。
当たり前ですがお二方共にお若い。
ミスターは「地球の歩き方」ですが大泉先生は「個人旅行 北欧」です。まぁ昭文社…詳しいですよね。人間をダメにする後部座席で予備知識を入れながら車内を無理やり盛り上げてらしたかと思うと…ガイドブックって大事ですね。
こちらでも昭文社が活躍。昭文社のガイドブックも良いわけですが…たぶん藤村&嬉野D世代で旅行ガイドブックの代名詞が「地球の歩き方」なんでしょうね。だからトークでついつい「地球の歩き方に書いてる」と言っちゃうんでしょう。
非常に状態の良いガイドブックがAmazonで激安販売中です。前置きはさておき下巻の感想は…
リベンジ編で感動したのは「キャンプ地」の場所
ちょっと感動しました。ここです↓
さすがにネタバレなので全部は載せませんが思わずグーグルアースで調べちゃいますよね。ちなみにこの本は主要ルート、経由地、滞在地の座標付き。ピンポイントで旅の位置を共有することが出きます。GPS・コンパス機能搭載のコンデジが出始めの頃ですかね。
この北欧でも旅のツボは押さえてます。ヨーテボリ、トロンハイム、ロヴァニエミなんてプロっぽい選択の地名ですよね。まぁ一般的にレンタカーでドライブとなれば暇というのは知られた場所なのでシリヤラインに乗ったりオーロラを見たりする場所ですが…人間、何かしていないと落ち着かないというのは現代病かもしれませんね。
そういえばABBAの曲も流れていました。スウェーデン語で発売されていたらここまで世界的大ヒットを飛ばさなかったと言われる名盤が北海道のローカル番組で流れたわけですから衝撃的ですよね。オンエアー当時でも目新しさの無い曲ですが退屈な映像に刺激を与えるにはインパクトのある選曲だと思います。
ヨーロッパ20カ国完全制覇もカリスマぶり全開
たぶん過去2回の旅で学習してますよね。
どうでしょう軍団であれば8日間でやらかすには余裕すら感じるルート選びです。このルートは現役をリタイヤされた年配の方が仲間やご夫婦でドライブを楽しまれるルートで有名でして、私も何度か旅の手配をお手伝いしたことがあります。
しかもフィレンツェ、ジェノバ、モナコ、エクス・アン・プロバンスという見事なセレブルート。あえて足りないキーワードといえばリヴィエラの女王「ニース」ですかね。画面にはチラリと文字が映りますが…。
まぁモナコを押さえちゃうとニースの出番ナシの代わりにプロバンスを放り込む辺りが旅のカリスマたるゆえんですよね。やってること、魅せ方がプロ。
それがスペインに入ると同時に海岸ルートから外れ、例の糸ようじの要塞都市クエンカを経由し、宿泊先にパラドールを選ぶという…どんだけ旅のプロなのというルートです。海岸線にも道路はあるし景色も綺麗なんだけどクエンカ経由なんですね。そして、これだけ盛りだくさんの見せ場があるのに藤やんの距離計算は相変わらずです。
それでも大陸の「ほぼ最西端に到着」して旅を終えたんですね。この「ほぼ」っていうのがなんとも水どうらしい締めくくり方ですよね。
まぁ旅の目的なんて人それぞれですが、人生で何度も行くことはない場所ですからユーラシア大陸最西端のロカ岬まで行けばいいのに行かないんですね。「ほぼ最西端」で終わっちゃうわけです。
それにしてもご本家バンプレストさん、ちょっとお高いですな^^;
水曜どうでしょうの「旅」をキーワードにした仕掛けというのは…
好き勝手書きますが…
ひとえに藤村Dの個人的な人生欲求を満たすための手段だと思います。それを会社やテレビという器を使い、タレントお二方の力で表現すると画面から個人的欲求を感じにくいわけですが、この本にも気になる一文がありました。
「嬉野さん以外は基本的にみんな運転したい。大泉さんと俺とでいつもハンドルの取り合い。発言権のあるものが運転席を取るという流れ。」
私は嬉野さんタイプでございまして…運転に惹かれないタイプですが…
この流れは西日本制覇の代打赤ヘル、お遍路ドライブ、アラスカのキャンピングカー、ユーコンのカヌー漕ぎに通ずるものがありますよね。この番組を見ていると「もっと人生は楽しまないとダメだぞ。損だぞ!」って感じがします。
ただ単に会社に帰属して迎合して給料もらってるんじゃなくて、その会社の強み(会社の金とテレビや映像、二次利用という武器)を利用し、いかにして自分の人生を豊かに楽しむか?というリーマン枠内での奮闘を感じるわけです。
そういう視点で藤村Dの「我の強い個性」を羨ましく感じるか?といえばそうでもなく、初期の映像はどこにでもいそうなディレクターです。ご本人も少しずつ変化してスタイルを確立されてきたことを感じます。素晴らしいですよね。
藤村Dは「考えて、決めてから行動」というお方ではないんですね。たぶん一応考えてるし、事前に概ね決めてるけどロケは微妙な”のりしろ”を残しなが進めているので「走りながら考え、行動しながら随時変更する」ディレクション。これが「ここをキャンプ地とする」という名言を生みますが、名言が生まれる背景として事前のキャンプ支度と現地でのロケ決行はセットです。
なにかが生まれる空気感を察知&共有できるのがどうでしょう軍団でありカリスマとなる要素なんでしょうね。藤村Dにはアフリカのように手を抜きまくった内容ではなく中老でも耳順でも旅の道中に一苦労感じさせる構成を願いたいものです。
「一生どうでしょうします」とはいうものの…引き際も大事ですよね。
2冊の地球の歩き方を眺めていますとね…人生に旅は必需品と感じます。自分の五感で外の空気を感じようと思わなくなったり綺麗なものを見ようとしなくなったら人生終わりですね。
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