ナショナル ジオグラフィック アドベンチャー

ありがたい一冊
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本日は息抜きエントリー。久しぶりに移民本を探していたら出てきたのがナショナルジオグラフィック(以下ナショジオ)。この雑誌は探検や冒険、異文化の紹介など、世界の景色や人々を伝える雑誌として有名でした。

この雑誌を手に取ると確かに冒険心がくすぐられた記憶があります。

ナショナルジオグラフィック日本版サイト
ナショナルジオグラフィック日本版サイト。世界のニュースや驚きの写真、1888年創刊で世界850万人が読むNational Geographic誌の内容のほか、連載、インタビューをご覧いただけます。

ナショジオは「紙→VHS→CD→ネット」への変遷をたどる最適雑誌だと思いますが、久しぶりにバックナンバーを眺めると「この雑誌も1997年ごろから政治色が強まり、2000年にはプロパガンダな雑誌へ変化してるな」と思います。

(親会社がウォルト・ディズニー・テレビジョンですからお察し)

日本語版記事のタイトルだけを追っても、そこから「文化」が薄まってゆく歴史が読み取れます。

ナショナル ジオグラフィック日本版 バックナンバー 1995-1997 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版サイト
月刊誌ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版サイト。自然、動物、環境、宇宙、歴史、文化などナショジオ独自の写真、動画、連載、インタビュー、本・DVD情報を提供し...

各国、各地域の文化が緩やかに変化すれば雑誌も続くはずですが、グローバリズムやボーダレスによる文化破壊でネタ切れならぬネタ消え。人間の行動が経済一辺倒になりすぎでしょうね。

ついでの機会にストックメモ。どの号も読み応えのあるアドベンチャー記事です。

 

1995年10月号 大アマゾンを行く

今ではユーチューバーが手作りイカダで川下りする大河アマゾン。なかなかボリュームのある特集記事です。私も死ぬまでに移動してみたい場所のひとつですが年齢と共に体力の衰えを理解し優先ランキングが下がる一方です。

(イキトスよりも奥地のペルー辺りから大西洋側まで徘徊したいガチ欲求)

この頃の私は海外を積極徘徊していた年頃で、ナショジオで予備知識を得るのが楽しみでした。

今はなんでもネットの時代ですが、日本人に馴染みの薄いポルトガル語やスペイン語圏に加え、アマゾンはあまりにも広大なので、いま読んでも「やっぱアマゾンすげーな」と思いますね。

 

1996年1月号 北極海横断116日 1900キロ

アメリカ、イギリス、ロシア、デンマーク、日本の5カ国でロシア側から入る北極海無動力横断を成功させた記事。はやい話が犬ぞり探検隊。

この記事を読み終わった後で「やっぱ植村直己、すごっ!」と思ったことを覚えています。

今回久しぶりに読み返して笑ったロシア人の詩。日本人にしか分からないプチダジャレ要素。

氷に押されて東へ西へ…やれやれ、なんでまたこんな凍える旅に出たのか。ボヤルスキー

 

1997年5月号 アラスカ山脈1250キロを自転車で走破

この号は圧倒的ボリュームでインド特集ですが、雑誌の後半に載るこの記事を読んだ時「アラスカを自転車で?はぁ?」と思ったのを覚えています。

アメリカのアラスカ州東端から西端へチタン製自転車を漕いで走破、担いで踏破です。文字で書くと簡単ですが北米最高峰のマッキンリーが鎮座するデナリを通過する過酷なルート。

旅の選択肢として自転車好きでなければ後回しな記事ですが、無難な旅ばかりの経験値で満たされると、レンタカーやバイク、もしくは徒歩スタイルへと意識が向きます。

私のバケットリストのひとつは南米縦断(パタゴニア)サイクリング。体力があれば簡単なことですが介護が終わってリストに優先順位を付けると下位に落ちそうです。

 

1997年12月号、1998年2月号、4月号 オーストラリア自転車旅行

色々な国に行きましたが「この国には2度と来ないな」と思ったのがオーストラリア。

(悪い印象はまったくないけれど…)

観光視点でみるとエンターテイメント系は人工すぎてげんなりな思い出しかありません。日本のような文化や伝統の繊細さを微塵も感じない国の印象。

(ほんの一部しか知らないんだけどね)

第2回の冒頭にはこんな文が載っています。

どうしてオーストラリアを自転車で一遊するのか。僕には、個人的な理由があった。妻と別れたことだ。米国からこの国にやってきて15年、次に何をすればいいのか分からなかった。だからぼくは旅に出た。….中略…第2の故郷になったオーストラリアは、自分にとってどんな場所なのか。その答えを探す時間はたっぷりあった。
  • 第1回 自転車で走った自分発見の長い道

  • 第2回 灼熱の砂漠をひた走る

  • 第3回 遂に大陸一周1万5000キロを完走

この記事を令和に読むとアメリカ人がオーストラリアでチャリンコ旅することがいかにもたいそうに書かれているように思えます。それだけ自由な往来ができる社会に暮らしており、確かにそんな動画は山ほど出てくるが、1万5000キロを日本でやらかすと、たぶん2往復半。

久しぶりに読み直すと「やっぱデカい国なんだな」としみじみ。

第1回の記事にはこんなコラムも。

オーストラリア横断に挑んだ日本人たち
高繁勝彦さん、宮崎奈美さん、永瀬忠志さん…中略…冒険後、3人は新しい人生に踏み出した。ひとつの冒険が、それぞれの心に自信を与え、新たな挑戦を促している。

余談ですが第3回記事にはシドモアが撮影した100年前の日本が特集されており、そこに写る子たちの屈託のない笑顔が印象的です。100年前の子どもが障子に落書きしたひらがな文字を読める自分が「あ、自分、日本人なんだな」と思わせてくれます。

 

1998年6月号 シベリア横断鉄道

旅好きなら一度はあこがれるシベリア鉄道ネタ。

いまでこそネットで北京発やウラジオストク発の動画をいつでも見れますが、この当時はこれぐらいの情報でも贅沢だったわけですが、載っている写真は取材によるものなので、乗り鉄による車窓からの移動風景動画とは違う迫力があります。

下の写真からも画力が伝わってきません?なかなかの面構えでしょ?

モスクワから西側は、いま最もややこしい地域であるウクライナのハリコフ、そしてベラルーシを抜けてポーランドのワルシャワへ続くと解説されています。ちなみに続く記事は世界一美しい鳥といわれるグアテマラのケツァール。

 

2000年10月、2001年3月号、8月号 アフリカ徒歩横断

この記事は3部構成。動画時代に同じことをする人が現れないのでいまでも読み応えがあります。

面白い発見は記事前ページの広告。2000年10月号はデジカメの「ソニーサイバーショット DSC-P1」が載り、翌年年3月号記事にはリバーサルフィルム「富士フイルムクラッセ 77,000円」の広告。確かにフイルム現像のお店が生きていた時代です。

記事には衛星電話でのネットメールをやりとりする写真が載っています。これも今ではSIMカードの入替えで済みますが、アフリカの奥地となれば今も衛星電話が必要。

(そのうち日本の田舎でも必要になりそうですが…)

  • 第1回 密林の生態を記録

  • 第2回 緑の魔境を抜けて

ドローンの無い時代の空撮

  • 第3回 3200キロを456日で踏破

カメラはDCR-VX2000に見える

第1回記事に付箋を発見。なにが書いてあったかというと…

日本は伝統的に野生動物を利用する文化が根強くある。しかし同時に、熱帯林保護について考える必要が私たちにはある。保護とは、すべての種を完全に守ることでも、ペットのようにお気に入りの種をかわいがるということでもないのだ。

 

2004年8月号 南パタゴニアの大氷原 525キロを縦断する

私がパタゴニアに興味を持ったのは、誰かの自転車縦断ブログを見てからです。なにもない美しさへの憧れのようなものですね。そんな憧れなんて日々低下し、いつの日か忘れることかと思いきや、今でも行きたい場所のひとつ。人工物に囲まれた生活に飽きてるんでしょうね。

金儲けに明け暮れる北半球人の悪行に惑わされず、いまでもこの状態が見られる場所という意味で本当の意味での自然を感じられるのは南半球の旅かもしれません。

 

2005年4月号 日本のエクスプローラー

表紙は植村直己。左側が1978年の英語版、右側が2015年の日本版。

「外へ出ようとする者」というタイトルから始まる文章は池澤夏樹さん。このコラムの小見出しに私の心がグッと掴まれる文章があります。

和を以て貴しとする日本人は横紙破りが不得意かもしれない。しかし、だからこそ、能力に支えられた蛮勇が大事なのではないか。
「横紙破りが不得意」の意味は、「縦に透かした和紙は横には破りにくいところから、自己実現や自己主張を無理やり押し通すのが不得意」の意味だと思いますが、能力があるのであれば「やってみなさい」ということでしょうね。
続く記事は関野吉晴さんと小林快次さん。どちらも有名人。 

日本の食料自給率を知るにつけ、自給自足で北極圏を歩いたことがピンとこない、危機感の薄い日本人も増えてると思います。

自分の健康状態、手持ちの食料、引き連れている相棒の犬たち、移動距離、天候などを計算しながらも、常に頭の中では「食料確保、食料、食料…」を考え続ける日々です。これが現代人は「お金確保、お金、お金…」に置き換わってしまい生存能力は下がる一方。

 

2013年12月号 人類の旅路を歩く

関野吉晴さんの行程を真逆に移動した記事。関野さんの超人ぶりが理解できます。人間も動物も遺体と遭遇する旅というのはワイルド。

私の経験だと、旅で死体遭遇はインドのガンジス川やネパール山岳地域の鳥葬で、それでも知らない人よりはリアルな経験として知っていますが、それも世界のごく一部の情報であることを実感させる記事です。

写真の文字を読み取れると思いますが「世界を歩く旅は、空腹を痛いほど感じる旅」だそうで、錆きった五感が蘇る旅になるそうです。「皮膚感覚で感じ取れる」と書いてあります。

いまの時代、スマホの電源を切って、五感で藪漕ぎしながら山遊びすることが贅沢な時代になりつつありますね。

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冒険の本はあまり多くなく、情報が紙からデジタルへ変わって以降は読破するとネタに枯渇します。しかし、ナショナル・ジオグラフィックはネットで古本を1冊100〜300円ぐらいで入手できますので、ご自身の興味に合わせてお楽しみください。以上、古本整理でした。

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