偽情報と独裁者[How to Stand Up to a Dictator]

ありがたい一冊
この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

年末に「10冊ほど本を買ってくれんか」と親に頼まれましてね、その中の1冊が本書。原題は「独裁者に立ち向かう方法」ですが日本語タイトルの方が秀逸です。

そろそろ85歳で、生活の半分は認知行動な人がスマホもSNSも使わないのになんでこんな本を読みたくなったのか謎ですが、おそらく新聞広告を読むヒマがある要介護者と読まない息子との差ですかね。

本の内容を雑にまとめると「ジャーナリストのSNSとの向き合い方」といった感じ。

SNSの影響力が幅を利かす時代ですから私の捉え方は「この本もまたプロパガンダである」という穿った思考で読み進めました。なにせ帯コメントの「ヒラリー・クリントン」と著者の「CNN勤務」というだけで、そーなります。

(SNSを知らない我が親に理解できるのかどうか…)

 

最近ツイッター(現エックス)を見て感じたことですが、色々な政党が「除名(除籍)処分」というのをされてます。偶然だと思いますがよく見ました。最近は自民党京都でやっていましたが除名された瞬間に、除名された方を応援していた方が迷子になります。

(昨日まで応援していたのになんで?)

そこで生じるのが「党の判断に従う派」と「除名された人に従う派」です。

除籍された瞬間にSNS内で分断が生じ、さっきまでの味方が敵になるんです。

たまたま自民党の例を出しましたが、これはどこの党でもやっています。もちろん除籍や除名された立場になって考えると、凄まじい排除感があるでしょうね。

これに思うことは、政治に金がかかりすぎることで欲をかいたり、諦めや踏ん切りが付かないビジネス政治によるところが問題の要因ではないか?と思うのですが、いずれにしてもSNSではそんなことを四六時中やっていて、1日に10回以上ツイートしてる人などを見ますと「この人、SNS中毒だろーなー」なんて思うわけです。

20回以上ツイートしている人などは「いつ寝てるの?」とか思わざるをえません。

(そもそも人間として存在確認できない、文字のみを信じること自体がゴニョゴニョ…)

私のSNS史は「どれも使ったことがあるけど、どれも放置」で10年以上経過しておりますが、SNSの情報発信がマネタイズの社会ですから、これを生活の中心に組み込んだ生き方をせざるをえない難しさも理解できますが…

 

そういえば12/29の日経で下の記事が話題でしたけど…

外務省、偽情報をAIで探知 国際情勢分析にも活用へ – 外務省は2024年度予算案で偽情報対策に関わる予算を積み増した。偽情報のモニタリングや分析関連で9.2億円を計上した。23年度当初予算の2.1億円に比べて4倍超にあたる。

どのぐらいの数の日本人が外務省を信用しているのか?知りたいところです。

 

ちょっとだけ面白かった部分を抜粋しますと…

 

誰かがやって来て、この番組は放送できない、とか、前もって見せろと言われたら、それは報道の自由を封じられたも同然なのだ…相手が誰であろうと、私たちはけっして、けっして、けっして、脅しに屈してはならない。 - p.62

日本は「報道しない自由」の国なので私もテレビを捨てて10年経ちますが、テレビがなくて困ったことは一度もありません。テレビがあったときに感化され影響を感じたことは多々。世間が何を言ってるかの確認に見る必要すらないですょ。時間の無駄。

 

最初に三つの言葉を徹底させた。透明性、説明責任、一貫性。 - p.105

これを会社経営に徹底させた理由は個人的な人間関係を超えてシステム的に機能するため。納得の3点ですが、透明性と説明責任は対の関係にも見えます。この2点を徹底すると、いわゆる「親しき仲にも礼儀あり」が機能する気がします。

 

人間の意思決定の80パーセントから95パーセントは、思考ではなく感情に基づいて行われていることがあきらかになっていた。 – p.135

ネットで繰り返される分断構造が説明されていて興味深い。私たちはSNSで話題のごく一部の情報に妄想を膨らまし、感情的に脊髄反射し、それがSNSネットワークで膨張し、中には行動を促す。つまり最初に出される情報が不完全であることに加え、今では「SNSだとこうバズるはず」と意図的に仕掛けている人がいるわけで…SNSは「話半分以下」という理解でよい塩梅です。

 

フェイスブックの専制的なアルゴリズムの設計を巧みに利用していた。- p.187

SNSでインフルエンサーがフォロワーを巧みに動かして優位な状況を作る実例としてフィリピンの大統領選を例に書かれていますが、今ではもっと複雑化していると思います。そもそもFB時代は終わっていますが別の言い方だと、常に新しいSNSを使えばトレンド起こせるとも言えそうです。

Facebookアルゴリズムの変遷~2004年から現在、注目ポイントを解説~ - GLOBAL MARKETING BLOG | 世界のマーケティング情報が集まるメディア
Facebookアルゴリズムを理解することは、企業が海外向けFacebookアカウントの運用や広告運用を検討した際に、非常に重要なポイントとなります。数あるソーシャルメディアの中で圧倒的なユーザー数を...

 

土台にあるのは、もはや風前の灯も同然のジャーナリズムの核心、ファクトチェックだ。  – p.309

ファクトチェック組織自体にファクトチェックが必要というお話。「人を見たら泥棒と思え」。

 

2022年5月、まったく同じことをハンガリーの首相オルバン・ヴィクトルが繰り返した。その国家観には「グレート・リプレイスメント」が組み込まれている。 – p.315
ここから本書の結びへと続きます。少しネタバレを書きますが興味深い点は「感情に流されず、恐怖を受け入れ、善を信じ、チームを作り云々」と書かれています。この「チームを作り」という部分を読みながら「その通りだけど、これもまた分断を助長するな」と思っています。
 
今の時代に合った内容で、あっという間に読み終えました。
世界的傾向として首が直角に曲がるぐらい左傾化した社会ですから、少々右へ向けてもバランスは崩れたままで、中庸を維持する難しさを感じます。
こういう本を読んでも「これもまたプロパガンダ」とか思ってしまう思考もウクライナ問題とコロナ騒ぎのお陰です。テクノロジーは世の中を便利にしているのではなく複雑にしているだけです。

share

コメント