福祉車両スペイドのメモです。細かいことはメーカーの公式サイトに記載されていますが、ユーザーの視点でメモしたいと思います。スペックは兄弟車のポルテと同様だと考えて大丈夫です。
購入した車両は「サイドアクセス車 脱着シート仕様“Bタイプ“」のグレードX(2WD)で、着脱シートは手動式です。手動式というのは「電動車椅子ではない」という意味です。
この車には車専用の車いすが付属していますが、ラゲッジスペースに専用リフトは装備されていません。車椅子を自力で持ち上げて車内に運び入れるタイプです。若いときは苦になりませんが、かなり体力を消耗する作業です。一応、車の基本スペックをメモしておきます。
- 最小回転半径 : 5m
- 排気量 : 1,496cc
- 燃費 : 22.2km/L
- 全長 : 399cm
- 全高 : 169cm
- 全幅 : 169cm
- 乗車定員 : 3名
- 分類 : 5ナンバー
片側のみのスライドドアでセンターピラーの柱部分がないため、広々とした設計で、子育て中のママに人気があるようです。コンパクトカーとバンの中間に位置し、プチバンと呼ばれているそうですが、購入後に知ることとなりました。
燃費もまずまずです。高速道路をあまり走っていないため、市街地では平均18km程度です。
リフト荷重量100キロ!
今後も随時改良されると思いますが、リフトの能力は「シートの重さを除いて100kg」と記載されていました。つまり、100kgの人を乗せてシートが上下します。
一方で、着脱シート自体の重さは45kgだそうです。実際に押してみると、かなりの重さを感じます。正直言って、かなり重いです。ディーラーで押した際に「えっ、こんなに重いのか」と驚きました。普段使うには少し考えさせられる重さです。その時、一瞬「シンプルなリフトアップ車にした方がいいかな」とも考えました。
しかし、頻度は少ないとはいえ、後々この機能が役立つことがありました。
例えば、体重が55kgの女性が座ると、シートと合わせて100kgを押すことになります。高齢者でもゆっくり押すことは可能ですが、少し傾斜のある場所で勢いをつけると加速して危険です。
この便利なシートですが、注意が必要です。操作する際にはそれなりに体力を使いますね。
スペイド専用の車いすを使用すると、重さが一気に軽くなり20kgです。一般的な車いすと言ってもいいでしょう。スペイド仕様の車いすよりも市販の車いすの方が軽いものがたくさんあります。いずれにしても、体重が100kgまで対応してくれるそうです。
100kg設定は一般的には十分でしょうね。
操作リモコンはめちゃ簡単仕様
素晴らしい設計ですね。ボタン表示が「上・下」のみであるため、間違える余地がありません。ボタンを長押し操作する際に、途中で指を離して長押しを止めれば椅子の動きも止まります。
このように簡単な操作で、操作ミスが限りなくゼロに近いのは素晴らしいですね。高齢者が多い時代には最適な仕様だと思います。
着脱シート操作もめちゃ簡単です
「着脱シート」は私にとって最大の魅力です。
この機能はトヨタ車にしかなく、コンパクトサイズの車を選ぶと必然的にポルテやスペイドにたどり着きます。アルファードなら当然の機能ですが、全長が約1mも違うと比較はできません。
コンパクトカーサイズでこの機能を実現するところがポイントです。
このシートでの乗り降り操作に多少のコツや慣れは必要ですが習得してしまえば難しくありません。電極部分がガチッと噛み合えば可動してくれます。
車イスとしては当たり前ですが着脱シートにも肘当て(アームレスト)が標準でついています。運転席もオプションで付けられます。
専用車イスを載せるにはちょっとしたコツが要る
専用車いすを載せるためには、専用のサイドアクセスユニット(15kg)が必要です。写真の下にある黒い大きな部品を専用のネジで固定します。
このユニットへ20kgの専用車イスを載せ、利用者が車イスに座ったまま乗降可能仕様です。
専用車イス側にも専用部品を1つ取り付けます。そして合体。取付操作としては2ステップを経ますが慣れれば簡単です。
車いすに座った状態での乗降車が楽になったとしても、長時間のドライブには適していないことがあります。しかし、要介護者や介助者のケアの手間が減るため、ありがたい機能です。専用車いすもしっかりと作られています。
背もたれ部分を合体させると、座り心地がハイバックチェアのようで良いです。
私の素直な感想として、移動時間が60分以下、できれば30分未満の病院や施設だと、発着地での移乗の手間が省けて便利ですが、それ以上の長時間をこの専用車いすで過ごすと、腰から背中にかけての姿勢が直角になるため疲れます。要介護者に合わせて使い分けが必要だと思います。
トヨタ ウェルキャブ 専用車椅子(浮かした状態で停止も可)
「専用車イス」と「脱着シート」を使い分ける際の注意点は地面とリフトの接地面が異なる高さという点。覚えてしまえば簡単ですが高齢者だと手順を忘れそうです。
ちなみに80歳を越した私の親は説明直後「最初のイスの位置はもう忘れた」と言っておりました。
気になる室内空間も必要にして十分
この車は乗車定員3名仕様です。それを踏まえた上でご参考ください。
脱着シート動作時
脱着シートは車内での転回時につま先が当たらないように設計されています。高身長の人や足が大きい人はつま先が当たる可能性もありますが、靴のサイズが27cmぐらいまでは余裕があると思います。
運転席と脱着シートの間
広々ウォークスルーとは言いませんが、一応車内で前後席への移動は可能です。大人のスニーカーの幅がすっぽり収まるので、子どもがスイスイ移動できるというのはCM通りですね。
脱着シートの後部
足の踏み場が一切ないため、シート部分もはめ殺し状態です。下の写真は着脱シートの後部を真上から撮ったもので、左側がスライドドア後部です。確かに狭いですね。
右側に縦に黒いバーが見えている通りリアシートははめ殺し状態。物を置けるように専用トレイが固定設置されています。このトレイは4人乗らないように注意喚起の意味合いがあると思いますが、ルールを守れば必要ないですよね。
3人定員仕様ですから、この部分をフリースペースにしてくれるとトランク側から車いすを収納しやすくなるのですが、その方が設計上コストが高くつくでしょうね。
リアシートの足周り
私は運転が嫌いなので出来るだけ視界確保に運転座席の高さをMaxまで上げ、前方のボンネットとヘッドライトの境目が目視できる位置まで座席を前に出しているので後ろは広々スペース。
たぶん小さい机を置いて仕事ができるよ。
ラゲッジスペース
車イス用収納装置が必要かどうかはカタログで眺めている段階では疑問に思っていましたが、実際に20kgの車いすを持ち上げるとなると、高齢者にとっては大変な作業です。ほぼ不可能ですね。
70歳を過ぎて老老介護が意識され、夫婦のどちらかが車の運転を求められ、同時に車いすの操作が必要な状況になった場合、「車イス用収納装置」の検討は真剣に考えるべきだと思います。
市販の車いすも軽量なものは8-9kg程度であり、高スペックでも15kg程度の商品が多く存在するため、腕に自信のある方は収納装置なしでも問題ないでしょうね。
現在載せているものは専用車イスの他に写真でも見えている座席&背もたれマット、サイドアクセスユニット、パンパンに詰め込んでいるスーパーの買い物袋2つなど…まだ載る広さです。
昨今の老健や特養は基本的に街の外れや田舎に位置しています。高速道路へのアクセスが良い施設も多いですが、公共交通機関からは非常に不便なことが多く、そのような場所への看病や見舞いは車以外では難しいことが多いです。超高齢社会で老老介護が他人事ではない現代において、こうした点にも注意を払わなければならない時代になっています。
【2019.07.14 追記 】自動車税は免除された
自動車税は毎年5月に支払うものなので、7月にメモするのもアレですが、福祉車両は基本的に免除されることが多く、私の場合は毎年全額免除されています。これは有り難いことです。
たまたま税事務所へ伺う機会があったので尋ねたら、「障害者減免」「公益減免」「構造減免」などの難しい名称が付いていますが、簡単に言うと免除パターンは2つあります。
- 家族に要介護者がいる場合
- 車自体が福祉車両である場合
私は手続きとしては2番で進めました。
税額は排気量によって異なりますが、普通車だと約3-4.5万円が免除されるのは大きいですよね。毎年のことですから。このことを知った後は、「どーせ高齢社会なんだし、スペイドはアレだけど、車種によって乗車定員が同じなら福祉車両を買うのも良くね?」と思ったのでした。
3年も乗れば減免額でアジアのビーチリゾート往復航空券+ホテル付き1人分になりそうです。
【2020.10.6 追記 】福祉車両の車検ってどーなるの?
結論として、福祉車両は中身も値段も普通の一般車両とまったく同じです。日頃からメンテナンスされていればコストを抑えることができます。タイヤ、バッテリー、オイル交換など全てが普通の車と同じ車検です。車椅子が付いている車だから高いということはありません。なぜならその部分と車検は別の話です。
ざっくりと細かいことを書くと、2020年現在で「重量税15,000円、自賠責保険21,550円、印紙代1,000円」の合計37,550円は法定費用として必要不可欠です。これをトヨタで車検したら車検基本料金が約32,000円(税込)です。ざっくり7万円です。あとはオプションによる料金増加があります。例えばエンジンオイル交換、ワイパーラバー交換、フィルター交換などなどです。
出費を高く感じるパーツはアイドリングストップ用の専用バッテリーになると思います。
福祉車両の肝となる部分に故障がなければ、オートバックスでもラビットでもどこでもよいでしょう。なぜなら本当に一般車と同じ内容の車検ですから。しかし、肝となるリフト機能が気になるようならディーラーに任せた方がよいでしょうね。
(2022年9月追記)購入から4年目にしてタイヤ交換しました。溝はまだ耐えられましたが側面にヒビが入り始めたので即決しました。
ということでザックリと車イスごと乗る車「スペイド」のメモでした。一般的に車のレビューは走行性、燃費、座り心地、操作性能などを書きますが、この福祉車両は要介護者を快適に移動させるのが最大のポイント。それ以外は自動車の基本性能を満たしていれば文句なしです。
もし購入検討中で気になる部分があればコメ確認して追記します。
最後に余談メモですが、最近の車にはよく下のマークが付いております。このマークに拘束力はないですし、そもそも車イスすら乗らない軽自動車にもバンバン貼られております。欧米ではパーキングパーミット(利用許可証)を発行していたりします。
私の車には付けておりませんが、真面目な話し…
車イスの専用駐車スペースが一般車に占拠されて困ることが増えました。そういう立場になって初めて分かることです。あまりにも気遣いが足りないので、そろそろマークを付けようと思います。
ただね、この国の高齢者は爆増します。パーキングパーミットも良いですが、それを発行するシステムや人件費すら無駄や無理な時代まであと僅か。ルールを作らないと機能しないのも寂しい話しですしゆずりあいの気持ちが大切ですね。
コメント