日本人だけが知らない日本のカラクリ

ありがたい一冊
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本日のメモはいわゆる「日本人が知らない」シリーズ。発売は2000年。なかなか面白い本です。

バブル崩壊後5-6年は内部留保とリストラで耐えたものの経済は浮上できず、その後利下げ対応しても経済は浮上できず、本書登場2000年の3年後にアベノミクス登場。異次元の金融緩和でもまだ経済は浮上できず、令和になってもいまだデフレの雰囲気を内包したスタグフレーションで経済は浮上できず。

一見浮上しているように見えるのは、それまでに蓄えていた資産を手放して生き延びているだけ。

(東京メトロ上場による資産売却は最たる例)

いま日本がどういう状況かと言うと、国内経済格差を作ることで「ものすごく儲ける人」と「生きるのも難しいぐらい儲けが少ない人」の差益で国の体裁は維持できたものの、副作用として子どもが生まれない国になってしまい、それは今も継続中というお話し。

(G7共通の傾向ですよね)

この本の著者はパトリック・スミス。ヘラルド・トリビューン誌の東京支局長だったそうです。

手っ取りばやくAmazon書評を眺めると…

・流行りではない、本当のこと。2000年に出版されたこの本は、今の日本の現状が予言されている。

・ヤマト魂なんて言うけれど、それは生まれつきのものだろうかと、考えてみたことがありますか?

・特筆すべきは、1945年以降の体制が崩壊したこと(2009年までに日本国内では事実上完了した)

・アメリカが自民党に資金援助をすることで、日本の政治を操ろうとしていた

こんなことが書いてあります。2009年に日本崩壊済というコメント…

そしてご覧くだされ。帯が秀逸!

この帯、すごくないでか?

2000年発売の本に「japan as No.1」すらGHQのプロパガンダで、それにまんまと乗せられて戦後50年以上も徹夜踊りしているのが日本人ですよ!と言ってます。

(もう敗戦から79年目なんだけど…)

確かに2000年の頃の日本には、まだ「世界の中の日本」という残り香が社会の随所に漂っていたと思います。私もサラリーマンをしながらそれを感じていました。それこそが騙され、乗せられていたということです。

そして「日本人は知ろうともしない」とあります。

つ・ま・り、公立の義務教育レベルを落とせる底辺まで落とし「生涯にわたり自ら知りたいと欲しないロボット人間を量産した結果」ということです。その教育で小学校から英語が大事といってますから日本が滅亡寸前なわけです。

当たり前ですよね。日本に限らず独自の言語を捨てたら民族の存在意義は薄れる一方です。

あれから24年、四半世紀後にこの本を読んでどう感じたのか…。

目に見えない日本人

これは1章のタイトルです。この透明人間めいた表現が不気味です。冒頭から日本人を煽りまくる文章がこれでもかという量であびせられます。

アウトラインだけ少し紹介しますと….

こうして戦後、作り上げられた「ジャパン」はいまも広く受け入れられている。ワシントンの東京にたいする態度はまるで植民地宗主国による従属国の扱いだが、「ジャパン」はそれに反映されている。- p.18

なんということでしょう。戦後の日本はワシントンの植民地だと言ってます。これを2000年に理解していた日本人はいたんでしょうか?

アメリカ人は、日本人を作りなおす(アメリカのイメージで徹底改造する)という野心的な計画を持って占領をはじめ、まさに根絶するつもりだった事柄と人びとをむしろ復活、復権させてしまった。当時の努力はニューディールの善意から成っていたが、後には冷戦の計算がはたらいた。しかし、それら両極端の行動にはひとつの共通点があった。いかなる時点でも、占領者は日本人を自分たちの影のような存在としてしか見なかったのだ。 – p.19

いやー、参りますね。

いまの日本人を見ると正しくこの文章の通り、アメリカナイズされた言動の日本人だらけ。

最近SNSでは「北方領土が戻らないのは日本がアメリカの植民地だからだ」という文字もよく目にしますが、確かに米軍基地だけで全国120ヶ所以上、自衛隊提供基地と合わせると200ヶ所を越え、アメリカ人だらけの国に北方領土をホイホイと返還するはずありません。

いま目の前にある日本は、戦後アメリカが作りあげて以来なんら変わっていないからだ。途方もなく腐敗しており、市場支配に取り憑かれてたおり、生態環境については無謀きわまりなく、個人を押し殺しており、政治が正常に機能せず、リーダーは不在で、決断力はまったくない。 – p.22

似たことをカレル・ヴァン・ウォルフレンというジャーナリストも言ってた記憶がありますが、それにしてもすべてが凝縮されているにも関わらず間接的表現が妙に日本人ぽくてこそばゆい。

生態系は「個人を押し殺し」ていますから人口が増えないのも当たり前。

本書の冒頭から猛スピードでぶっ飛ばす文章が続き、あまりにも今の日本そのままなので「どういうわけで日本はこのような状態のまま50年間も凍りついたのか?」と思っていたら、その答えもあっさりご披露。

それは「1947年施行のマッカーサー起草憲法の9条と1951年に調印された安全保障条約に縛られている」とあります。

これら両文書はアメリカ人が仕掛けたものだが、両者が併存するとはなんとも驚くべきことである。それこそ、いまも日本が患っている病「政治と外交の精神分裂症」の最たる実例だからだ。この病気を同胞につかませたのが吉田茂だった。 - p.23

潔い文章です。その通り。他にも…

1957年6月、首相になりたての岸はアメリカを訪問した。CIAが岸に秘密資金を送りはじめたのは、この訪米の直後だったようである。 – p.35

いまでは「おじいちゃんの代からCIA」なんて解説動画もゴロゴロしていますからなんの驚きもありませんが、日本人が話すと陰謀論になるんですよね。

この後も色々な角度から日本解説が試みられています。

記憶に残るキーワードは「ヤクザ、ジャパン・バッシング、イエズス会、ペリー、護送船団方式、東大、浪人、塾、機械人間を量産する受験システム、サラリーマン、過労死、残業、銀行、日本文学(与謝野、三島、村上など)、フェミニスト、日本列島改造論、GHQと国体、天皇、自民党、安全保障、中曽根、靖国、憲法の文体、南蛮屏風」。

なんとも昭和なキーワードが並んでおります。

そして本書の締めくくりは…

なんらかの事態が、われわれすべての者を揺さぶり起こすだろう。たとえば、日本が国連安全保障理事会の常任理事になるとか、なんらかの危機に際して日本がイニシアティヴをにぎる、あるいは日本が新憲法を採択する、または新しい政治秩序が出現するなど、完全に実際的な展開が起こったときだ。そのときはじめて、われわれは、想像上の日本が現実の日本に、表象が実物に、模倣者が本物になりはじめたと実感するにちがいない。 – p.348

日本が国連安全保障理事会の常任理事になっても日本が変わることは無いと思いますが…いずれにせよまとめると「戦後80年の似非日本は主権国家ではない」と書かれた本です。

すべて概ね事実だからぐうの音も出ませんが、私自身も2000年ごろを境に日本の凋落を感じていたので、それを振り返るにはよい本でした。

すこし誇張していえばアメリカ人によるマウンティング構成の本であり、明治維新から続く国際金融資本や戦後アメリカの傀儡国家も事実というのに清々しく読めました。その理由を考えていたのですがおそらく日本人として日本史の長さは常識であり、どのキーワードも織り込み済みとして受け入れられるのにアメリカ人はこれだけのキーワードを拾ってようやく「日本人だけが知らない日本のカラクリ」というタイトルで煽るのが精一杯というギャップでしょうね。

さりとて今の私に生活の余裕があるかといえば、年々、日々貧しくなっており、そろそろ「新しい政治秩序が出現するなど、完全に実際的な展開が起こっ」てくれないと困ります。

いまの日本に息苦しさを感じるのは「人間が社会に合わせる」構造だと思います。本書には「人間が制度を変えるのであって、制度が人間を変えるのではない」とある通り、そろそろ「社会を人間に合わせる」ことをしないと、少なくとも無子化は止まらないでしょうね。

日本人だけが知らない日本のカラクリ」、アマゾンで1円で買えます。読むべき良書です。

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