108年の幸せな孤独 – キューバ最後の日本人移民、島津三一郎

ありがたい一冊
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相変わらず南米を探る本を読み漁っておりますが、この本は読み終えるのに5ヶ月要しました。100ページぐらいまで読み進めた辺りで飽きちゃった。

なんで飽きたかというと、中身は島津三一郎ドキュメンタリーですがタイトル通り「108歳のキューバへの日本人移民」ですから島津さんだけで情報が完結しません。色んな方が登場するものの関連性の深さ、濃さ、薄さは想像でしか埋められず「ちょっと内容がボケちゃうなー」と思ったら読むことに飽きちゃいました。

以前パラグアイ移民のその後をまとめた本を読みましたが、あの体だと1人ずつストーリーが完結して読みやすいのに比べ内容量は遥かに少ないのに読みづらい印象。

遥かなる地球の裏側に夢を馳せた人々 南米パラグアイ在住日系移住者の声
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そうはいっても「キューバへの日本人移民」はレアケース。160ページを過ぎてからは一気に読破しました。こーゆー人生もあったんですね。

面白く感じたのが2ヶ所。

キューバで暮らす人々が本当にいい時代だったと位置付けていた1980年代の半ばの好景気も、実はキューバ本来の経済力に導かれていたわけではなかった。…90-93年ごろには、政府は正式には両替を認めていなかったが、路上で換金すれば150キューバ・ペソが1アメリカドルの価値にしかならなかった。…1985年と1993年…数字上は8年で230分の1にまで下落した計算になる。

1985年はプラザ合意の年。日本の「お金持ち」がある日突然「大金持ち」になれた年だったりしますが、そのころ地球の裏側ではこんなことをしてたんですね。オジサンが小6〜中1ごろの話。

もとは「1US$=1キューバ・ペソ」が8年の価値操作で国家が転がる。しかも私が生きてる時代、つい先日のことのように感じる不思議さがあります。

もうひとつはキューバの医療事情。

キューバでは医師も薬をつくる製薬会社も民間ではない。つまり、金儲けを争うライバルは存在しない。人工透析治療で利益を得る人間は皆無であり、医療に携わる人間は患者数が減ることに幸せを感じる。

ごく当たり前のことを新鮮に感じる不思議さ。

この文書を真逆に読むと「医療に携わる人間は患者数が増えることに幸せを感じる」です。こっちの方が想像容易い皮肉。日本の病院事情を知りませんが素人が考えても日本で患者が減ると病院経営が成り立たず困ります。

…ぜんぜん島津さんのことを書いておりませんが…

まぁ、大変な時代を生きた方ですよね。

今のようなデジタル社会で生活がよくなったかと問われると「いつの時代も遠回りはあるなぁ」なんて感じながら読みました。「誰かに知られることなくカリブ海に消えた消息不明の日本人移民とかいるんだろうなぁ」なんてね。

214ページにフランシスコ・宮坂さんの私見が書かれています。この言葉に現代社会の各国情勢が凝縮されているように感じました。詳しくは買って読んでくだされ。

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