COOK ‘S TRAVEL SERVICE : Over the Seven Seas

ありがたい一冊
Over the Seven Seas 1923
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ボチボチやめますけどね、まだ読んでます。トーマス・クック関連。

だって面白いから。

タイトルからしてどこぞの豪華客船内のレストラン名みたいな雰囲気ですが、ある意味正解です。1923-1924年にトーマス・クックが世界で仕掛けた旅が載っております。今から約96年前のお話し。

この小冊子はニューヨーク本店で編集されアメリカで印刷されたもので、今回マイアミから送ってもらいました。いわゆる前書き部分に「WE BLAZED THE TRAIL」という題で自画自賛の自己紹介が載っています。自画自賛とは言っても他に類のないサービスを展開していたのでその通りではありますが、トーマス・クックがプレジャートラベルを開発し、取り扱い範囲からして「クック以外に選択肢はないでしょ?」という自信がすごいです。

WE BLAZED THE TRAIL

世界各国の情報が載っておりますが、今のようにグローバル化されていない時代に国を説明(表現)する言葉に見慣れてないせいかそれぞれの写真に記された文が面白く「まぁ、そうだよねー」と感心していました。「THE LIFE-GIVING WELL IN THE DESERT」とか「IN THE LAND OF THE PHARAOHS」など。

The Delectable Land of Japan

コレ↑↑↑なんて訳せばいいんですかね?頭の賢いそこのお方、教えてください。

(かの政治家の言葉って英語だとこーなるのかな。知らんけど)

そーゆー国なんですが「ホテルはまだ無い」と書かれています。

公式には無い国だったのかもしれません。実際は営業していたと予想しますが。その日本へは韓国から船で下関や門司へ入り、まずは宮島見物と書かれておりました。西の歴史的玄関口として下関や門司はもう少しアピールされても良いと思いますが今はイメージが地味ですよね。長崎よりも地味な印象。

そこから絵巻物のごとき美しさの瀬戸内を列車で抜け神戸へ向かうと書かれています。

そのあとは「大阪、京都(保津川下り、嵐山)、琵琶湖、奈良、名古屋」をウロウロしながら富士山麓の宮ノ下というコース。その後の解説は「日光、東京(浅草公園、帝国劇場)、横浜、鎌倉大仏」という…そういうゴールデンルートを作っていたようです。

そして日本の次はホノルルへ。

どこ?

その紹介文で使われている写真が上のものです。コレどこですか?手前の看板には横文字で「◯文川店 Dry Goods Store」と書かれているので呉服屋だと思います。旗に見えるは「三」の文字ですから、もしかして三井呉服店ですか?違うと思いますが。

横文字表記ですからどこかの港町付近だと想像しますが、その奥には「◯夛村 一」と読めるのぼりが見えます。スポンサー名は「小むら」ですかね。電柱があるので江戸の終わりか明治のはじめ頃だと思いますが洋服姿が見えませんし火事装束のような着物や人力車からして江戸末期が濃厚な気がします。たった一枚の写真ですが反転させて文字を拡大して検索を楽しみました。

ズームして楽しむ

この本(小冊子)は今でいうところの旅行パンフレットに相当するようで、ワールドクルーズ寄港時のオプショナルツアーが載っております。コレをメモしながら思ったことですが旅行パンフレットもこの本同様にあと数年で消える運命でしょうね。既にお宝アイテムになりかけてますよね。

全部で6コース載っていましたが、少しだけ書き出しますと…

 

9月8日発 : 西日本周遊コース

面白い書き方ですよ。モデルコースの組み立て方が書かれています。

そもそものオリジナルコースは8月21日に東洋汽船の大洋丸でサンフランシスコ発・ハワイ経由横浜行きの船に合わせた内容です。ちなみにハワイのホテルはかのMoana Hotelです。

まず8月23日にカナディアンパシフィック社の蒸気船「Empress of Canada」でバンクーバー出発と書かれており、その船の予約はバンクーバーのジョージアストリート支店で受け付けると書いてあります。その船が9月3日に横浜に着きます。その後は9/8-9日で(たぶん鉄道で)京都、9/10日は鉄道で神戸、9/11日は神戸から大洋丸に乗り、9/12-13日は長崎で人力車観光。9/15日に上海行きの船へ乗り韓国や中国へ行けると書いてあります。

別の楽しみ方として先のコースに似た船移動が紹介されており、8月30日にシアトルを出る「Admiral Oriental Line」に乗ると9/10-11に横浜、9/12-13に神戸、9/15に上海へ抜けるルートもあり、ブリティッシュコロンビア州のビクトリア島からも乗船可能と書かれています。このコースだと日本のクックでの利益はゼロですが、バンクーバー支店の船の手配手数料は稼げます。

どの船で来日しても効率よく旅を楽しめる工夫がなされていたようで、同じノリで世界中のオプショナルツアーが網羅されているので当時はワクワクする小冊子だったと思います。いわゆる混載ツアーの元祖ですかね。

 

10月3日発 : ニッポンの紅葉と菊

これも新鮮なコース。

10月3日に下関に入り、朝食後鉄道で宮島へ。翌4日の午後特急列車で京都へ。10/5-9は関西を周遊して楽しめ!と書いてあります。10/10は「山田」とだけ書かれています。11/11は名古屋から列車で小田原の国府津へ向かい、車に乗り換えて宮ノ下へ、10/12-14は箱根界隈をドライブ、10/15-16は東京に入り人力車でいろんな場所を見て、10/17-18は日光を堪能し、10/19横浜到着&鎌倉観光。横浜は港町なのでどーにでもなるが、10/22から上海・香港行きの船があるよ、と。

このルートは手前に上海や北京のオプショナルツアーが書かれており明らかに世界一周ルートの区間乗船のような表記です。そこには「Yamato Hotel」と書かれていますから…歴史ですね。

このコースのどこで菊がメインディッシュになるのか分かりませんが日本文化をよく調べてますよね。秋菊が日本の伝統的フォルムであることを知って付けたタイトルだと察します。

 

10月13日発 : 西日本周遊コース

9月のコースに似ています。

もそものオリジナルコースは9月19日にマトソンラインのマウイ号でサンフランシスコ発・ハワイ経由横浜行きの船に合わせた内容です。ちなみにハワイのホテルはかのMoana Hotelですが詳しくはマトソン社の歴史を読んでフムフムとお楽しみください。

10月13日横浜に着き人力車で市内観光、14日は特急列車で京都、15日は終日京都観光、16日は列車で神戸へ向かい人力車で市内観光、17日はこれや丸(Korea Maru)で瀬戸内海を終日航海、18-19日は長崎で人力車による市内観光、21日には上海へ向かうと書かれています。

別の楽しみ方として10月4日にバングーバーを出る「Empress of Asia」でも日本を楽しめることが書かれています、9月のパターンに似ているので詳細は省きますが下の動画に出てくる人たちが日本の地を踏みクック手配のツアーを楽しんだことを想像すると感慨深いものがあります。

 

4月22日発 : 桜祭りコース

このコースは10月3日のコースに似ているので詳細は省きます。面白いのは船名。10月13日にニューヨーク発のホワイトスターライン所有の有名なマジェスティック号によるワールドクルーズです。後のキュナードですがこの会社はタイタニックで有名です。そういう船が横浜港に賑わいを運んでいたことを想像すると面白いですね。

なんやかんやと色々な本を読んでは歴史を感じて楽しみました。堪能。

たぶん観光に関わらず今老舗と言われる商売の金儲けヒストリーは2-3世紀以内のことで、世界を知り得るデータも1世紀半遡るのが精一杯だろうと思います。今までの流れで言えば船旅があり、飛行機の旅があり、行き尽くしたので宇宙へ向かうと思いますが、私のような世代をカモにすべく「ノスタルジーな復刻シリーズは商品開発としてアリだな」と思いながら読んでいました。

働く立場であれば1秒でも早く忘れたいぐらいショックな倒産劇で改めて残念に感じます。

INFORMATION FOR TRAVELLERS VISITING JAPAN.
せっかくの機会なので、この際徹底的に調べつくしてやれと思って購入してみました。有名な「日本の歩き方」です。

巻末に下のコピーが載っていました。かの業界でよく使われるキーワードですが別の意味で感慨深い文字となりました。日本には歴史が長い会社が多いと言われておりますが世に永遠ナシ。改めて変化に対応する大切さを思い知らされる歴史ヒストリアでした。

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