30代でこの分野のアンテナが働く人はかなり鋭い感性の持ち主だと思います。
40代に入ると昭和の残り香が感じられる懐かしさから「こういう家に住みたい」と思う人は増えると思います。しかし買うとなると悩むことは多く現実的ではありません。本日は「圖解台灣 日式住宅建築」のメモです。
本物の古民家は手が出せない金額
私も滋賀、京都、奈良、和歌山、大阪、岡山、三重に出向いて物件を見て回りましたが利便性が良いと価格が高く、利便性が低いと価格は安くなります。つまり田舎に行けば古民家は手頃な値段ですが都会では新築価格と大差がなくなります。今日は西日本全域で大雨特別警報が出ていますが…..古民家をお持ちの方は心配ですよね。
なぜ都会の古民家に価値があるかというと、その理由は太平洋戦争までさかのぼります。アメリカ軍による空爆により日本は焦土と化しました。日本には47の都道府県がありますが、空襲がなかった県は北海道、山形、石川、滋賀、奈良、京都、鳥取、島根、香川、徳島、佐賀、宮崎、鹿児島の13地域。つまり34地域は爆弾が降ってきた場所なので戦禍を免れた木造古民家が貴重になります。既に戦後70年を過ぎていますから現存する古民家物件は本物の100年住宅です。今後も戦争がなければ受け継がれると思います。
でも仮に買えたとしても維持費が大変です。茅葺き屋根なんて側から見れば懐かしいですが維持しようと思うと葺き替えだけで家が買える費用。豪商のお屋敷のような立派なのものが欲しいとは思いませんが手頃で懐かしさに触れられる家には憧れます。
懐かしいから憧れる昔の家
子供のころの記憶は曖昧で正確に思い出せませんがその記憶を辿ると…
- 五右衛門風呂を自分で沸かして入った
- 玄関を入ると広い土間があった
- 食料保存用の地下室があった
- 縁側で昼寝した
- 茅葺き屋根だった
- 牛を飼っていた頃の太い柱や梁が目に焼き付いている
- 意味を知らずに床の間を眺めていた
- 汲み取り式便所の臭いがあった
とにかく木が溢れていた印象です。アスファルトを見たのは道路だけです。建物の土台は石を積んであり、周囲の舗装はセメント。建物は木と土と藁だけ。自然にあるものだけで作られていますから健康にも良い環境だったと思います。
とても合理的で素朴な生活ですよね。
スーパーで買い物をするとプラスチックのゴミに悩まされますが40-50年前はスーパーのレジ袋は紙袋の時代です。鮮魚もその場でさばいて小さなビニール袋にポイっと入れて渡されるパターン。残飯は新聞に包み、先の紙袋に入れて捨てていました。それ以外の燃えるゴミは五右衛門風呂の燃料です。とてもエコ。
こういう子どもの頃の実体験があるので昔の家の良さが忘れられません。
現実は耐震補強されていない時代の物件だらけ
世間的には南海トラフ地震が注目されており、この被害は日本を破局的な状態に追い込むことが予想されており悩ましい問題です。戦前から建っている物件であれば地震後も生き残る可能性がありますが、戦後の高度成長期の物件は耐震設計が低い。
南海トラフ地震は多くの場所で震度6予想ですから地域によっては壊滅的です。
こんな地震が来ることが分かっているのに耐震補強が必要な物件入手は勇気が入りますよね。それでもコンクリートのマンションには惹かれません。今まで何度も引越しを繰り返しましたが高層マンションで住んだ経験があっても所有欲求は湧きません。
旅行中に買った「圖解 台灣 日式住宅建築」が秀逸
台湾も地震が多い場所ですが日本建築が強いと言っても耐震には限度があります。台湾も南海トラフ地震を免れません。そんな台湾で売られている本が「圖解台灣 日式住宅建築」です。
現存する日本や台湾の家から日本建築の特徴が解説されており、写真もふんだんに使われています。この写真がとにかく懐かしく面白い。
ビジュアルとして分かりやすいものばかり。図面、名称、外観、外壁、玄関、座敷、床の間、床、障子、襖、欄間、鴨居、敷居、釘隠し、雨戸、屋根、広間や廊下、茶の間、風呂、トイレ、竃(かまど)、縁側など。挙げるときりがありません。
日本住宅の木造構造や電気を通す碍子(がいし)の配線まで書かれています。
日本では専門書になると思いますが海外視点だと一般書のような読みやすさを感じます。住宅のリノベーションで検索される「和風」「和モダン」「レトロ」視点ではありません。あくまでも住宅の機能に重きを置いた内容です。
もちろん漢字から文脈を推察する読み方ですが、それでも読み応えある一冊です。詳しくは樂天台灣で確認できます。そうは言っても時代は平成の終わり。憧れだけでは楽しくありません。たまにはこんなアプリをいじって最新のオシャレな建物を眺めて楽しんでいます。
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