JR三江線廃止は他人事ではない時代へ

人口減少
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先日来地震で揺れている場所ですが島根県の江津駅と広島県の三次駅を結ぶJR三江線が廃止というニュースが気になっていたものの放ったらかしだったので勉強していました。ラジオを聞きながら気になったのが「本州で100キロを超える路線の全線廃止」という解説。既に人口減少により自治体維持が不可能な地域も増えていますが、いよいよ本格的に地方都市の生き残りをかけた戦いが始まった感がありました。

一部開業から数えると88年の歴史を終えたわたけですが、それは昭和5年のことです。この年の出来事を自分のアンテナが理解できるキーワードで拾うと「銀座三越開業」「ユナイテッド航空世界初のCA」ぐらいでしたが日本も世界も近代化へ舵を切る真っ最中であったことが伺えました。この路線付近の昭和14年の郷土史を読んでいたら「馬車、大八車、自転車、貨物自動車」と書かれていましたから当時の鉄道(鐵道)がこの地域にもたらした影響は大きかったと思います。

しかし全線開通から43年。謳歌した期間が私の人生より短いというのは寂しく感じます。

昭和5年の逓信省郵務局による郵便線路図

昭和5年の逓信省(総務省)の古い地図を見ると一見ネットワーク網が敷かれているように見えましたが、詳細を見ると山間部は途切れ途切れですから馬車や大八車が普通であったと思います。まぁ文字にすれば昭和5年ですが、都では地下鉄が開業という時期に郷土も鉄道が敷かれるわけですし、その地域の人々も誇らしく感じてたでしょうね。

さらに古い明治の文献を見ると広島の呉、鳥取の米子、兵庫の姫路や和田山辺りの文字が多く、島根を外側からジワジワと繋げていったことがよくわかりました。道を作ることが大事業だった時代なんですね。

別の資料には当時の日本の植民地政策なども載っておりましたが地方の田舎から見れば「なんのこっちゃ」みたいな話しか、それとも「大日本帝国万歳」だったのか…。これまた別の邑南町(おうなんちょう)「郷土のかがやき」を読むと「去る日露の役奉天會戦中李家窩棚に於ける戦闘は頗る激烈を極め我聯隊は…」みたいな書き出しで軍国主義夜明け前といった感じかもしれませんね。

すっかり話がそれましたが1924年(大正13年)の「島根県案内図」には…旧字だらけなので現代意訳で書きますが、こんなことが書かれていました。

島根縣案内

「京都を起点とする山陰本線は、一方で大阪より分岐する福知山線および姫路より分れる播但線、その他の小さな路線より鳥取県を経てやって来ることができ、中海・宍道湖畔を過ぎて日本海沿岸に沿って多くの峻嶺難関を超えて浜田駅から山口線に連絡し、本県を縦貫して山陽線に連絡をするいわゆる山陰縦貫鉄道なので、島根県としては東は京阪地方、西は九州地方と連絡する一大動脈線です。このほか出雲大社参拝に便利な大社線および一畑薬師寺に達する一畑軽便鉄道は共に山陰本線出雲駅より分岐します。また、奥出雲開発の使命をもつ簸上線は山陰本線宍道駅より分かれて木次に至り、この延長は僅か51キロに過ぎないが、将来木次線開通の暁には広島県との交通上重要な路線です。その他予定線の萩線、廣濱線、三江線、伯備線、美保杵築線などが完成すれば、本県の発展を期待して待つべきものがあります。」

つまり初めから芸備線と木次線がメインということなんですかね。この路線も山あいを縫うようなコースですが松江とつながることがポイントなんでしょうね。最新データだと江津市の人口は約2万4千人、一方松江市は約20万人でした。ちなみに三次市は約5万3千人。つまり人口が2-5万を結ぶ路線というのは事業としての体を成さず廃線予備軍です。

自分が住む地域の人口動態を知れば未来は予測でき、将来どこでなにをすべきかのヒントになります。

廃線後はバスなどの代替交通の話題へ変わりますが、路線バスも山間部は需要が乏しく年々廃止が消えております。全体で見れば緩やかに消滅させているように見えますが、部分で見ればバス会社の負担はとても大きいわけで…。つい最近も両備バスの「合計31路線のバス路線廃止届」が話題でしたが、炎上させなければだれも振り向いてくれないほど地方の窮地は深刻です。

この手の問題は「便利・不便」とか代替輸送運賃が高いことが予想されますが、そんな枝葉議論は興味なく、鉄道ファンの惜しむべき声にも興味なく、この「100キロを超える路線の全線廃止」と外国人観光客誘致を考えていました。

地元の人以外は無関係ネタで、私にとっても無関係ですが昨今話題の松山刑務所からの逃走事件先のホットスポット「向島」事情も考えさせらにれます。事件の解決が急がれますが、人口2.3万人程度の島に2016年時点の空家が1,086軒らしく…たぶん増えてますよね…今日から捜査態勢が910名になるそうです。空家数と捜査員を1対1に近づけてしらみ潰しということなんでしょうね。日本全土がこういう問題に直面しますから「人の動きがある場所 or 全くない場所」という切り分けや仕掛けは大事だと思います。

山陰山間部を何度も車で走ったことはありますが、三江線に乗ったことは(たぶん)なかったので探すと、やっぱり出てきますよね。撮り鉄。しっかり作業用BGM的に見ましたが実に風情のある日本らしい風景です。

この方は春の様子を撮られてますが、沿線にはありがちな桜の木が…。日本って桜だけは景観を意識して植えられてますよね。これだけは春になると全国どこでも愛でることが出来る景色です。

久しぶりに大いなる妄想…

これを観光資源として使えないか考えていたのですが、サイクリングコースにしちゃうってどーですかね。全部で108.1kmあるそうで、健康な方だと1日で移動できると思いますが、このルートを1日で終わらすのも味気ない。というか、元々サイクリングコースとしての設定はありますが、道路ではなく線路を走るというのがミソです。車道ではない良さを味わっていただく。その標高差1,006mだそうです。

元々川沿いを線路と道路が並走してるわけで…

これね、誰でも楽しめますが「勝手に楽しめ」という方法ではダメだと思います。誰も来ない。

利用料金は鉄道運賃よりも高くし、パターン化して「1日(片道)」「1泊2日」「2泊3日」の3パターンぐらいにしてね、必ずサイクリングガイド同行にしちゃうとか。登山ガイドみたいなもんです。線路伝いに行けば迷子になりませんが、それは地域の治安なども気にした策です。ガイドが同行するということは、走行証も発行できるでしょうね。まあこのルートで発行してもつまらないので今治まで走り抜けるコースかな。ブロックチェーンで処理できると思いますが…。

この泊数に応じて旅行者の荷物や食材を預かって先回りして運ぶのも料金に含めてね、仕事が減る時代に新しい仕事を生みますよ。スマホアプリで「口羽駅 テント番号No.5」とか事前に荷物到着や野営地が確認できたりして…。

ホームがあるということはトイレがあるということですし安心です。この際駅ナカキャンプサイトにしてしまえ。粕淵駅は三瓶山登山を意識したキャンプサイトにしちゃったりして…。途中の高架橋やトイレ有無といった鉄ちゃんならではの細かいことは横に置き、廃線を使った新しい旅の楽しみ方を提案すれば…とか妄想しておりました。

形あるものはいずれ消えますし、約100年という歳月で世の中は様変わりする良い例だと思いますが、先人が作った素朴な造形物を無駄にするのももったいない。できるだけ壊さず、少し手を加えて残す。他県に先駆けて新しい提案ができるような気がしていました。サイクリングコースを整備するお金すら惜しむなら、トレッキングコースとして解放する手もあるでしょうね。そろそろ旅の選択肢もピンポイントではなく全体で楽しむ仕掛けが必要な時期ではないかと思います。

『旅の過程にこそ価値がある』 – Steve Jobs

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること – en1

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