旅行会社が逝くとき。それは常に突然死で表面化する。

ひとりごと
この記事は約13分で読めます。
スポンサーリンク

つい先日、20代の職場仲間から電話がありました。声を聞くのも10年ぶりでびっくりです。

「子供は高校生になり嫁とは別れ」という会話でも声は元気そうでしたが、なんで電話をくれたのか考えていました。別段 "超" がつくほどの仲でもないのですが...。東京に出向いたときには会いたいと思っている今日この頃です。

さてと...

2-3日前から旅行会社「てるみくらぶ」のお客様がトラブルというニュース。

曰く「航空券の発券システムが利用できない等の事態が発生」して旅行に行けないとか。気の毒なニュースです。少なからず業界つながりのある私にも知り合いからメールが入っていたので少し調べていましたが公に具体的な情報は出ておらず「事件が現在進行形真っ最中」と思っていましたがとうとう「破産」の文字が出ました。

ネットを見ると「BSPってなに?」とかそれを解説してる動画とかも出ているようです。

今では全く関係ない業界ですが、少しメモを残してみたいと思います。

BSPなんて言葉を久しぶりに聞きましたが、私が知っているのは第一勧銀時代ですから大昔のお話し。お客様の立場から見るとBSPの仕組みはどうでもいい話しです。

要はお客様が旅行代金を旅行会社へ支払っても、そのお金が航空会社(やホテル)に渡らない状態になっていたということ。だから「飛行機に乗れないかも。ホテルに泊まれないかも」という騒ぎ。

航空会社やホテルから見ると「予約はあるけどお金は貰ってない」という状態。だからトラブルになったのですが速報だと負債総額が約151億と出ていましたから、それなりの額です。

第一報の表現が微妙すぎて感心した

私の経験から言うと「発券システムが利用できない等の事態」という言い回しが独特で感心しました。感心している場合ではないトラブルですが中年世代以上の業界(経験者)人は間違いなくジェットツアー倒産が脳裏をよぎったと思います。それは1998年のことでした。

「危ないらしいよ」という噂が先走って拡散したことも会社が傾いた原因の一つと言われています。噂による倒産も真実のようで、この噂が店舗からのパンフレット撤去を加速させたという事実は私も肌経験があります。今では事実もうわさも一瞬で世界拡散。

(つい先日までYouTubeにはジェットツアー倒産日のニュース映像が残っていましたが持ち主が非公開にしたようです。それぐらい衝撃的倒産劇でした)

今回の件はブリッジファイナンス万事休すを想像しましたがオフィシャルに倒産という文字は一切出ていませんでした。待っても出てこない会社のプレスより現地を旅行中の客が発信するSNS情報が現実。

「送迎がない」「ホテルがキャンセル」「部屋はリザーブされてるけど現金払い」など山のように情報が入り乱れています。だから第一報の表現が微妙であり、ある意味経営陣が最後まで踏ん張っている故の苦肉の表現ではないかと感じる言葉でした。性善説で捉えたいところです。

 

変化スピードに人間が追いつけない

てるみくらぶは1998年にスタートされたそうです。実は先のジェットツアーが逝った年です。

世にWin98が登場した年。OS購入に長蛇の列というのがニュースになった時代。あれから20年でシステムは激変し、いまも変化中。継続的に設備投資されてきたと思いますがこの変化に対応するだけでも大変だったと想像します。

ホームページを眺めながら「これだけ大量の商品を管理するだけでもかなりの労力だろう」と想像していました。全商品の内容把握は人間では無理でしょうね。

会見を見ていると正社員は7-80人らしく...本当に少数(精鋭)ですね。

そんな日常業務に今般のような問題が重なり海外現地からトラブルをネット経由でソーシャル発信されても状況を事細かに把握できるとは到底思えません。ほぼ不可能。だから金銭以外のことも含め渡航自粛を呼びかけたんでしょう。

効率を求めてシステム化、最小化しても全体ボリュームが人間の処理能力を越えるとどこかに亀裂が生じても手当できません。少なくともトラブル発生時の回避対応、コストは旅行代金に含まれていません。だから格安。どの業界や商品にも通ずる気がします。

 

新聞広告で旅行を売買する時代でもないのに飛びつく人々

ネットの残骸を見ると全国紙に全面広告。

これはこれで広告料金も大変な額。いま新聞を目にするのは総じて高齢者が多いと思いますが実際はどうなんですかね。というのもツイート(だけで真相はわかりませんが)の口語体、絵文字、リンク、書き込むスピードに高齢者を感じるものは皆無。

事件発生翌日深夜に渦中のハシュタグをスクロールして細かく見ました。

翌日の昼には膨大なツイート量。昼間に見ても年配者とおぼしき発言は皆無。

もしかしたら今日のニュースで知る高齢者がいたかもしれませんが3万6046人の一般債権者と新聞購読者層とツイッターの文字から想像するに、被害者は圧倒的に若い世代だと思います。

率直な感想として新聞広告やクルーズ商品を始めると売上金額がグッと上がるので、かなり経営を圧迫していたと思います。売れればよいですが私でも新聞なんて20年近く定期購読していないですし広告費用対効果は謎。ネット販売のノリで新聞広告へのシフトは甘すぎ。

そもそも新聞社側の広告審査が大甘です。新聞社の見て見ぬ振りも大概です。

 

ムダを削げ落とした価格 = 売り切り商品 = 自己責任

ネットの書き込みを見ると「昔お世話になった」というのをたくさん見ました。たぶん若い世代のニーズが大きかったみたいです。

いまどき「飛行機はxxホテルはxxで予約すればいいのに」とも。

誤解を恐れずに言えば今までの旅行代理店は御用聞き。私に変わって手間な手配やトラブル対処を代行してくれる人。タダでは無い。低価格の旅行商品に過度な期待がナンセンス。

トラブル解決の問合せでちょっと電話するにもネット経由ならいざ知らずMVNOの格安電話でも5分を越せば300円、500円、1000円はあっという間の通話料。どうみても利益なんてすぐに吹き飛ぶ旅行代金です。

1円でも安い旅がしたい人の感覚はよくわかりません。1円でも安い商品を提供したい人の感覚もよくわかりません。お得であることはありがたいですがトラブルが発生すればそれを吸収できる余力がなければ100均商品のように壊れたら終わりに似た感覚があります。

 

いずれ旅行代理店や実店舗は不要になって消える

会社は売上も大事で、ニュースを聞きかじると現金一括入金プランもあったとか。

この売り方に賛同はできませんが理解できます。仮に利益が僅かしか残らなくても運転資金を回す経営の苦労は相当なストレス。給与が遅れたり会社が潰れるとサラリーマンとしては(当然)ガタガタ言いたくなりますが、経営者が家族のような気持ちで取り組んでいることも理解できます。

(一応性善説で捉えたいところです)

ただ債権者となればそうも言っていられない。はらわたが煮え繰り返るを超えますよ。私でも。

旅行業は前受金の額が膨らむ傾向。旅行代金は積もり積もればかなりの額。計算するに及ばずですが1人10万の旅行代金は100名で1000万。人気が出てある程度順調な時はキャッシュフローしますが調子が悪くなり前受金に手をつけたら自転車の始まり。キャッシュブロー&アウトです。

結果小さな会社でも行き詰まった時の負債が大きくなることが多々。コツコツ頑張りここまでの大きなトラブルは避けられなかったかと残念です。そもそも最初はある程度の資金や我慢を覚悟で起業し、それなりに波に乗っていたのですから。ここにメスを入れないと忘れた頃にまた事故が起きるかもしれませんね。

書きながら「予約で半額回収、チェックイン時に残金回収」決済を妄想しましたが、AIや自動化まで幅広く捉えるともはや旅行代理店不要。

そのうち飛行機、ホテル、現地ツアーをAIが個人の嗜好に合わせた紹介をしてきますよ。

だからこそタリフという言葉すら死語でホールセラーというカテゴリーの旅行会社が淘汰される。SNS時代ですから個人が繋がって手配完了というのも当然の流れ。次はランドオペレーターが逝くことになります。

 

飛行機手配のトラブルは意外と小さい。ホテルのトラブルはちょっと厄介。

旅の骨格は「飛行機と宿」ですが、旅先に到着できなければ「宿」は要りません。だからこそ「飛行機」の確保は大事で、航空業界の決済ルールを守ることが会社の信用の一つです。

手元にチケットがあれば不穏なニュースが流れても搭乗できるのは航空約款に書いてある通りですが、路線の人気・不人気の内情は様々。それによって旅行会社と航空会社との精算額も大きく変わってきます。

お客様と旅行会社とのお金のやり取りに関係なく運送会社としての判断が求められるので乗れるか乗れないかはケースバイケース。今回は支払うべき約4億円分のお金がショートしたそうで、4億と聞けば大金ですが利益となるとびっくりするほど僅かなはず。

この類のトラブルが発生したら航空券には予約番号、リファレンスナンバー、PNRといった呼称は違えど意味するところは同様な記号や番号が(e)チケット毎に書かれているので自分で確認するしかないです。

ホテルは航空業界のような大規模組織がないので大部分が個別対応だと思いますが噂や事実が広がればお客様を無料で泊めることになるかもしれないので予約は消さないまでも代金は現地回収というのも想像容易いことです。お客様の立場だと2度払い。

しかしホテルの立場で言えばトラブル故にキャンセルされればその日の売上が消えます。ホテルに辿り着くかも分からない人の部屋を確保してくれているだけでも融通を利かした対応。もちろん突然現れた時に部屋がないお客様対応はホテルも仕事が増えるだけ。本音はお代を貰えるお客様に泊まってもらって利益を出すのが当たり前。

今回のトラブルは後始末の仕方がかなりたちが悪い。

なにせ旅行中のお客様が存在する中での出来事ですから。社長の弁でも最後まで踏ん張ったことが逆に被害を広げてしまった的な説明がありました。これに関わらずビジネスの引き際判断は難しいと痛感します。

(会社倒産劇で従業員は寝耳に水というのはあるある)

「高い・安い」という意味や理由を考えて買い物をする時代に変わることを願うばかりです。

価値が大事であり結果が価格。価格は売手も買手も費やされた時間に関係することが多い。その価値を理解できる人が適正なシェアになった時デフレが役目を終える。

どなたかが言われていたように「自転車(操業)って年金の賦課方式と一緒じゃん」とか「潰れるまで使い倒したもん勝ち」と言ってしまえばそれまでで、資本主義経済だからその通りだと思いますが年金に例えると全く笑えない話し。

人口が増えれば痛みも減りますが、人口は激減で痛みは増える一方。使い倒してもいずれは別の形で自分に跳ね返ってくることを妄想すると誰もが自分でよく考えて買い物することが求められるような気がします。会社の大小や大手新聞(広告)の安心感など全く関係ない時代。小さい会社でもコツコツと良い商品を提供している会社もありますから。

 

トラブルの時系列メモ (2017.3月 - 2019年.3月)

2017.3.27会見によると負債総額は約151億円。一般の負債は約99億円。債権者(旅行予約者のグループ単位)約3万6千件。延人数にすると推定8-9万人。旅行業界での弁済額上限1億2千万。問題発生時点での海外渡航中の旅行者は約3,000名強とのこと。

2017.3.30追記 3/30に関連会社2社も破産。負債総額が約214億円へ増えることとなる。ホールディングスの債権者約60名、負債約29億円。(株)自由自在の債権者650名、負債約34億円。(株)自由自在の負債はほとんどが旅行申込者とのこと。一連の破産に関係する一般の負債は約130億規模ということになる。

2017.4.3 追記 4/3現在で海外渡航中の旅行者は約1,100人に減少。3/27の会見から1週間ほどで約1/3へ。

2017.4.6 4/6現在で海外渡航中の旅行者は約400人に減少。

2017.5.9追記 5/9現在でJATA発表によると弁済申請書類請求数は約32,000件、申告金額は約86億円。自由自在の弁済申請書類請求数は約370件、申告金額は約5,600万円。

2017.6.22追記 JATAの定時総会で弁済業務の状況報告。旅行者の債権者が約9万6千人。債権総額は105億円。弁済限度額は1億2千万円であるため還付率は1.1%。弁済保障を希望する被害者の登録件数は約4万人。債権額のうち59億円はクレジットカード。カード会社から「チャージバック(取消手続き)」を受けた場合は弁済対象外となり還付率が上昇する可能性がある。関連会社の自由自在の債権者は1,800人。債権額は8,500万円。弁済限度額は7,000万円故に還元率は約82%。カード利用額は7,000万円と推定。11月に弁済業務委員会で審査、12月中には消費者への還付へ。JATAは書類の作成や発送、受領、問い合わせ窓口業務は専門業者に委託しており、経費は約1億2千万円に上る見通し。

2017.8.3追記(時事通信社記事) 7月5日以降、弁済業務保証金制度を使った返金資料の請求は約33,000件(92%)。8月1日時点で返金を求める申請は約5,300件(15%)。9月4日(月)まで受け付けているが、返金額の少なさを見越して断念する人もいる。

2017.11.7追記(業界紙記事) 11月6日、メルパルク東京ホールで第1回の債権者集会を開催。一般旅行者の債権者は約9万6,000人、債権額は総額107億円。正式な額は現在も不明状態。管財人資料によると2012年から手数料収入減少。2013年4月以降の繁忙期以外は粗利マイナスが常態化。2013年9月からIATA資格保持を優先し粉飾決算スタート。2014年9月に債務超過。2015年から新聞広告集客で事態は更に悪化。2017年2月時点で宿泊施設に対する取引債務が約5億6,600万円、3月23日にIATAに支払うべき約3億7,100万円の支払い不履行、宿泊施設や海外ランドオペレーターなどへの債務不履行も避けられず3月27日破産開始。2018年5月28日に第2回の債権者集会予定。

一問一答記事で気になったメモ

  • 円安になり赤字になった。航空会社の販促金が減り、結果として原価が高くなり赤字になった。
  • 決算を締める段階でマイナス(赤字)を資産に振り替えて利益を出していた。

2017.11.8追記(NHKニュース) 社長と経理を担当していた30代の社員を詐欺や有印私文書偽造などの疑いで逮捕

2017.11.16追記(業界紙記事) 弁済認証数は1万643件、総額34億2,059万948円。弁済率は3.5%。11月17日に認証通知書を発送、12月22日に還付金を振り込み開始。被害の最高額は364万3,600円に対し還付金額は127,526円。被害の最高額は5,948円に対し還付金額は208円となる模様。連鎖倒産した関連会社「自由自在」の弁済認証数は153件。総額2350万5000円は弁済業務保証金制度(限度額7,000万)以内に収まった模様。

2017.12.22追記(業界紙記事) 旅行申込者の意思を除き海外応募型企画旅行について、申込金の収受額を「旅行代金の2割相当額以内」と設定。また、残金の収受は「旅行開始日の前日から起算し、さかのぼって60日目に当たる日以降」にルール変更へ。(※フライ&クルーズや募集型ペックスは除く)

2018.4.25追記(NHKニュース) 東京地裁初公判にて元社長及び元経理は「債務超過を決算粉飾隠蔽、航空機チャーター代として偽造した航空会社請求書提示、三井住友銀行から融資金約3億9千万円、東日本銀行から融資金約1億5千万円の搾取、破産手続き中およそ1千万円をバッグに入れて持ち歩き管財人にも報告していなかった等」の罪状認否を「事実に間違いございません」と認めた。

2018.5.28追記(業界紙記事) 銀行と借入金相殺後の残高6,908万円、大韓航空販売奨励金2,996万、過年度の更正請求2億31万円の税金還付、その他約1800万円還付予定。

2018.10.22追記(業界紙記事) てるみくらぶ前身企業「アイ・トランスポート」も破産申請へ。なお、10月17日開催の「てるみくらぶ第2回債権者集会」で破産管財人は、てるみくらぶの債権額は137億1469万円、財産目録の資産合計(評価額)は5億5840万円で、一般債権者への配当が見込まれることを説明。3回目の債権者集会は2019年3月13日。

2019.3.14追記(東京商工リサーチ) 一般の債権額は142億8237万5176円。それに対し返金できる額は2億7135万7831円。一般債権の配当率は1.9%。10万円のツアー代金であれば1,900円となる。本年8月末を目処に順次返済予定。

事件終了に思うこと

歴史は繰り返す

終わってみれば140億が消えました。その中身を調べるのに2年を要したことになります。兆単位で勝負されるソフトバンクさんの有利子負債に比べれば小さな話しですが安物買いの銭失いとはこのことです。経営側も消費者も。

ネット上に残る「支払った旅行代金が9万、15万、35万、50万、90万...etc」どれも1.9%返金です。途中3.5%と予想されていた弁済率から半額に。

最期には49,800円のハワイ商品が登場していましたがこれ以下の価格で限定商品と銘打って現金入金させる商品は既に経営が綱渡りと言えます。ハワイは売上予測を立てやすい観光地。今後も現れるかもしれません。旅行に限らず安いものには訳アリです。

share

コメント

トップへ戻る